コラム
ビジネスの場で活躍する女性に「自分らしく働く」をテーマにご自身の経験や働くことへの考えを自由にお話いただく【イキイキと働く女性シリーズ】 第一回目の今回は、大手人材情報会社の営業として累計15憶売り上げた後、管理職を経て起業し、現在は経営と子育てに奮闘中というバイタリティ溢れるビジネスウーマンにお話を聞きました。 ビジネスの場で活躍している女性がどのような想い、考えを持ち働いているのかを知ることで、ぜひこれからキャリアのイメージを描いていく上での参考にしてください。
株式会社 terrace
代表取締役 柚木園 直子(ゆきぞの なおこ)
▶最初のキャリアは、意外にも社長秘書就職氷河期の最盛期といわれた1999年から社会人生活をスタートしました。当時、金融や商社の総合職の採用の男女比率は男性300人に対して女性3~5人で、女性の多くが一般職採用という時代でした。大学では体育会応援団チアリーディング部に所属し、男性と同じように肩を並べ切磋琢磨していた環境にいた私にとって、社会では男女の役割が異なることを痛感し強い違和感を覚えました。腑に落ちない思いを抱えつつも、大学の就職課からの紹介というご縁で、上場企業の社長秘書として働き始めました。業務上、会社の機密書類に目を通す機会が多く、また監査にも立ち会う為、入社して3年ほどで会社の流れが見えるようになっていきました。秘書という仕事は、経営者が適格に意思判断できる様、先回りして行動することを求められることが一般的です。個人的見解を伝える機会は少ないのですが日々経営者と接する中、「経営者に自分の考えや感じたことを伝えて、どんなシナジーが生まれるか試してみたい」という熱い想いが芽生えてきました。
▶人生を変えたキャッチコピー そんな私の目に留まったのが「今週は、5人の経営者と10人の人事担当者に会いに行きます」という大手人材情報会社の求人広告の営業職のキャッチコピーでした。自分の心が揺さぶられ、言葉がもたらす力に感銘を受けました。そのキャッチコピーとの出会いがきっかけとなり、当時、営業職で働くことなど、想像も希望もしていませんでしたが、「ヒト」も「話すこと」も好きだった為、営業職に挑戦することにしました。 大手人材情報会社を志望した理由は2つ。1つは、志のある経営者とたくさん出会い、視座を高めたい。2つ目は、優秀な人材が多いと評判の会社で、自分がどれだけ通用するのか試したいという気持ちからです。
▶新たな環境で見出した「営業の面白み」最初のミッションは、人材に困っている企業を探す、新規開拓でした。アポイントがない状態で企業を訪問し、ニーズを見つけてくる、飛び込み営業をしておりました。20階建てや30階建てのビルを上から1社1社訪問する中、冷たくあしらわれることや、邪険に扱われることもありました。厳しい現実に向き合いながらも、無数の企業に足を運び感じたことは、「就職活動時代に見ようともしなかった、名前も知らない会社や業界が世の中にはたくさん存在して、社会を創っている」という、当たり前のようで、気づかなかった事実でした。 一つ一つの出会いを、一期一会とするか、意味のある出会いとするかは自分次第だということが分かり、そこから”営業の面白さ”にはまっていったと思っています。
▶お客様と「企む」それから7年間、人材領域での営業人生が始まりました。商材は、新卒・中途向けの求人サイトになります。営業は、日々新しい出会いや発見があり、とても楽しかったです。一方で、自分のペースを崩されるのは好きではありませんでした。干渉されず、ご機嫌に仕事をするにはどうしたら良いか。そのためには周囲が一目置く結果を出す必要がありました。そこで実行したのが、三ヵ月の目標を二ヵ月で達成し、残りの一ヵ月は次の三ヵ月の達成の為に使う、ということでした。その時にこだわっていたのは、お客様と「企む」ことです。企むというのは、お客様さまが実現したい未来に、どうしたら計画より早く実現できるのか、お客様と一緒になって考え、実行することです。事業成長を加速させる為には、どんな人材が必要かを考え抜き、お客さま自身も気づいていない魅力や課題を抽出。意図した通りの結果に至ることが、とても嬉しく、楽しかったです。
▶営業とはエンターテイナー。商談は舞台。新規開拓営業を経験した後、既にお取引のある上場企業も含む大手企業を担当させていただくことになりました。その時ぶつかった壁が、「自分の介在価値がみえない」という不安な想いでした。時はリーマンショック直後で買い手市場。自社のホームページだけで応募者が集まる大手企業だからこそ感じたことでした。お客さまにとっての自分の介在価値が何かと向き合ったことにより「たとえすぐに売り上げに直結しなかったとしても、お客様さまの為に出来ることはもっとないだろうか」と深く考えるきっかけになりました。 営業とは、エンターテイナーであると考えています。私がお会いする人事の方は、通常社内フロアにいらっしゃいます。商談が行われる応接室は、人事の方からすると移動を伴う異空間となります。その場を楽しい時間にすることを心がけ、お客さまに「私と会うと楽しくなる、元気をもらえる」「新しい発見がある」「また会いたい」と思ってもらえる状態を目指しました。 人を喜ばせるのにはエネルギーが必要です。商談前には必ずお気に入りの音楽を聴いて、自分を鼓舞していました。そうして自分の気持ちを高めることで、「ここは私の舞台」という意気込みで商談に臨んでいました。 お客さまと会話する上で大切にしていたことは、プライベートなど仕事以外の話をし、お客さまを理解することを第一としたコミュニケーションを行っていたことです。具体的には、目の前にいる担当者が今ここに座って、私と対峙するまでにどのような背景があったのかを認識することです。入社経緯、ワークライフバランス、仕事の目的などキャッチUPしていました。 私は、営業という仕事を「業績構築」「課題解決」だけをするプレッシャーが強い仕事とは、思っていません。人を喜ばせるエンターテイナーであり、脚本家・演出家・演者のすべての要素をもっていると考えています。脚本家として、「商談のシナリオ設計」。演出家として「商談のシナリオ演出」。演者として「ストーリーテラー」。 商談では、演者である自分と演出家である自分という二役を意識して望んでいました。 他に大切にしていたことは、商談のイメージトレーニング(以下、イメトレ)です。一流のアスリートの方がイメトレを入念に行い、本番でベストな結果を出すために、頭で考えなくても体が勝手に動く、フロー状態を創りあげるのは有名ですが、営業においてもベストな商談を行うには、イメトレが必要だと考えています。自分の考えた提案に対し、お客さまのGOOD・BADの二つの反応を設定し、筋の通った持論が展開されているか、矛盾が生じていないか、営業移動中にイメージしていました。商談の場を演じる場、いわば「ひとつの舞台」と捉え、お客さまと自分、双方にとってベストな場となるように、イメトレは念入りに行うようにしていました。 体育会時代の経験から、頭の中で具体的なイメージができていないものは、再現しにくいということを理解していたからこそできた努力でした。
▶お客さまへの「好き」で成り立つ信頼関係心がけていたことは、対峙するお客様さまのことを誰よりも好きになることでした。完璧な人間ではないので、正直、コミュニケーションが上手くいかず、苦手と感じるお客さまもいましたが、お客さまの好きになれない面にフォーカスすることをまずやめました。「100%嫌な人など存在しない。どんな人にも大事な家族があり、友達があり、大切にしたい人がいる。少なくとも、自分自身のことを嫌な人と思っている人はいないはず。」と意識して思うようにしていました。良い部分にフォーカスすることを大事にしていると、その思いが相手に伝わり、本音を話してくれることが多くなりました。そうすると、「〇〇会社の△△さん」ではなく、目の前にいる「△△さん」個人として信頼して話をしてもらえました。 お客さまとの信頼関係性を大切にした上で、お客さまにとってベストな提案をさせていただきました。具体的には、求人情報サイト選定する際のポイントをお伝えし、さらにサイトに掲載されている数千の求人の中で、いかに求職者に企業の魅力に感じてもらい、アクションに繋げる情報を提供することの大切さを伝えました。 企業の魅力を引き出すこと、そしてその魅力にフォーカスした原稿を作成することには自負がありましたので、商談ではお客さまの具体的な魅力エピソードを言語化し、求める人材が採用できるイメージを共有しました。そうしてお客さまに任せて頂き、結果として、売上に繋がっていきました。
▶絶対的なオリジナリティーの追求伝えるべき魅力が一つもない会社など、絶対に存在しないと確信しています。世の中に価値を提供しているからこそ、会社として存続しているからです。 会社規模、商材、給料といったハード面では、差別化しづらいケースもあるかもしれません。しかし、ひとつだけ絶対的オリジナリティーといえる要素があります。それは「ヒト」です。ヒトだけは、自分と同じコピー人間はいないので、唯一無二の存在ですよね。どのような人が社内に働いていて、会社をどう創ろうとしているかに着眼すれば、絶対に会社独自のユニークな部分が見えてきます。どんなにAIがすすんでも、ヒト自身はアナログなので本質は変わらないと考えています。「この人だったら何とかしてくれるかも」という仕事への期待感は、感情や心理によるところが多いと思っています。求人広告営業という仕事は、企業の魅力を抽出、ヒトの心を動かし感動を提供する、とてもステキな仕事です。 営業の魅力、おもしろさを、少しでも感じていただけたら、とても嬉しく思います。
次回は後編。累計15億売り上げた柚木園さんが管理職を経て、2児の母になった今なぜ起業を決意したのか?その原動力は何なのか?などに迫ります。 ご期待ください!
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